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東京新聞主催「名流祭」好評で閉幕

 好評を頂いた真乃繪吏家元の「女人高野」
   東京新聞主催の第26回「名流祭」(10月21日:浅草公会堂) 

 浅草の秋の風物詩となっている東京新聞主催「名流祭」が10月21日(日)、東京都台東区の浅草公会堂で開かれほぼ満員の盛況裏に閉幕しました。今回の出演流派は首都圏を中心に名古屋、九州宮崎県などの42流派・会派から46人の宗家、家元、分家、二代目、会主が出演する全国的にも屈指の新舞踊の祭典になりましたが、既報のように真乃繪吏家元は田川寿美のヒット曲「女人高野」を披露、客席に深い感銘と大きな拍手をいただけました。少し前の12日(金)の東京新聞朝刊に「注目の出演者」として真乃家元のインタビュー記事が大きく掲載されて話題になっていたこともあって、家元にはプレッシャーだったようでしたが、真乃流のテーマ「踊る人も見る人も ともに心の躍る踊り」として「無心の清涼さ」で踊りぬきました。
 
 少しPRめくようで恐縮ですが、これまで一度も触れてこなかった真乃繪吏家元の作舞・振付の工夫を今回の「女人高野」でご説明させていただくことにいたしました。
 ”女人高野”とは、奈良県宇陀市にある室生寺をさします。同寺は奈良時代に建立され、石段上に見上げる国宝の五重塔、桜や紅葉の美しさでとりわけ女性たちの人気観光地になっています。ご存じとは思いますが、奈良県にあって弘法大師が設立され、皇室から公卿大名まで信仰の篤かった真言宗総本山の高野山は女人禁制で、一方、古刹の室生寺は女人禁制でなかったこともあって女性の深い信仰を集めて「女人高野」と呼ばれるようになったといいます。「女人高野」は室生寺の他にも幾つかありますが、室生寺が一番有名なようです。

 作家・五木寛之さんは初めて室生寺を訪れて、その歴史に興味を抱き、同寺に参拝する女性たちにイメージをふくらませて作詞されたそうです。五木さんは田川さんに「情念を断ち切って自立を決意しつつ室生寺に向かう女性の気持ちを歌に込めるように」と説明されたとか。2002年のリリース時に田川さんは五木さんの名詞を得て”脱演歌調”の決意で歌い、ヒット曲になりました。

 真乃繪吏家元はこうした作詞家、歌手の歌意にそって「江戸時代に京・島原かそのあたりで権勢を誇った一人の遊女が、無常を感じ意を決して育んだ愛も明日もあきらめて室生寺に向かうが、見上げる石段を前にして、愛し合った男性や自身の過去をふり捨てることに煩悩のような迷いを感じている。そんな仏門を目指す女の情念として、私の心の中にドラマを立ち上げてみよう」と振付に臨んだと話しています。
 
 オーケストラ演奏の前奏曲「通りゃんせ 通りやんせ ここはどこの細道じゃ…」が流れる中で幕が開き、舞台袖の花道から、長い旅路に疲労困憊した旅姿の若い遊女が現れ、周囲の山並みの中にようやく室生寺の石段を望見、疲れた脚をさすりながら笠と杖を持って御寺に吸い寄せられたかのように本舞台へ進んでいく。舞台の景色は杉木立と吊り枝の紅葉に彩られ、灯のともった燈篭4基が御寺への道を示している。遊女は遠い京やそこでの思い出を振り返り、そして男への未練をふり捨てるように思いを決して舞台中央へ歩むが、燈篭の先、室生寺の石段を前にしてやはり煩悩が心にもたげ、さまざまに迷い悩みながらも、気持ちをあらたにして石段を目指していく…。

 何度も繰り返して曲を聞き、このように組み上げたストーリーに沿って振付にかかります。ヒロインの心と一体になり切れば、おのずと振りがまとまってきます。お芝居でも役になり切ればどんな演技もその役らしくなると言われますが、踊りの心も同じであろうと家元は考えているのです。振りの所作も大切ですが、家元が一番心にとどめているのは踊りの間(ま)と、緩急の流れです。

 真乃流は創流時から「踊りの間」を流儀の大きな特色にしようと考えていて、いわば真乃流は「間乃流」でもあるのです。他流の御家元さんたちから「真乃繪吏さんのあの独特の間は真似ができない。真乃さんならではですね」とよく言われます。静と動、その流れの切り替えを大切に考えて振り付けますが、ある時は地唄舞の静、また若い頃に学んだジャズダンスやタップダンスのアップテンポの動なのでしょうか。むろん振り付けの基礎は18歳で名取師範を許された古典舞踊の技法が中心になっています。

 今回の「女人高野」の振り付けの中に、お客様は全く気が付かれなかったと思いますが、心の迷い、葛藤の表現の中に、仏に救済を求めるという気持ちで「千手観音のポーズ」をさりげなく振り付けしてあります。
 またご覧いただいたお客様の中にあるいは気づかれた方もいらっしゃったかと思いますが、花道からの出に持って出た杖は旅に使われる定番の踊り杖ではなく、路傍に落ちていた枯れ竹に、高位の遊女の優雅さと季節感を添えようと、小さな紅い紅葉をあしらってみた手作りの杖だったのです。古典舞踊の「吉野山」など道行に使われる舞踊杖では華やかすぎる気がして、このヒロインが持つにはそぐわないとホームセンターで資材を買って新規に作ったものです。

 明治座舞台の大道具さんが素晴らしいセットを組んでいただき、照明、音響さんから衣裳・かつら・化粧のスタッフの篤いサポートで無事に踊り終えました。そうした踊りの一端をファンが撮っていただいた写真でご紹介させていただきます。  



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      終演後、お客様に囲まれる真乃繪吏家元です。舞台の緊張がほぐれていました。
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Author:manoryu
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